近年注目されるようになった「エシカルファッション」。
最近ではearth music&ecologyがTVCMでエシカルファッションについて言及していたり、
ファッション雑誌で「エシカル」「サステナブル」というワードを目にすることも増えました。
実際、エシカルファッションとはどのようなファッションのことを指すのでしょうか。
私自身、できるだけ環境負荷の少ない消費をしたいと思っているので、
エシカルファッションを正しく知って選択していくためにも、
今回は
「エシカルファッションとは?」
「エシカルファッションのメリット・デメリット」
についてまとめていきたいと思います。
目次
エシカルとは?
「エシカル(Ethical)」とは、直訳すると「倫理の」「道徳(上)の」という意味です。
そして「エシカルファッション」とは、環境問題・労働問題・社会問題に配慮し、
良識にかなった素材の選定/購入/生産/販売をしているファッションのことを指しています。
欧米諸国で普及してきましたが、日本では2010年頃から注目されるようになったコンセプトです。
エシカルな商品を購入することを「エシカル消費」、その消費者のことを「エシカルコンシューマー(Consumer:消費者)」と呼びます。
ここまで見ると何となく良いことのような気がするけれど、「良識」って人によって違うし、なんとなくぼんやりした印象を受けます。エシカルファッションであることの判断になる指標は存在するのでしょうか?
エシカルファッションの基準
エシカルファッションには基準があるのか?というと、認証機関などは無いようです。
一方で、世界100か国以上の団体/個人が加盟している推進団体
”The Ethical Fashion Forum”がエシカルファッションの基準を以下の様に設定しています。
- ファストファッション、安い使い捨て型のファッション消費に反する
- 生産において労働者の賃金、権利、労働環境を守っている
- 動植物の持続可能性をサポートしている
- 有毒農薬や化学薬品の使用の問題に取り組んでいる
- 環境に優しい素材を開発、または使用している
- 水の使用量を最小限にしている
- リサイクルやエネルギー問題、ゴミ問題に取り組んでいる
- ファッションにおけるサステナビリティを作りだし、それを広めようとしている
- 新たな取り組みを人々に知らせ、解決策を広めようとしている
- 動物の権利を保護している
「sustainablejapan」HPより
世界で問題となっている人権問題、環境問題、動物の権利などに配慮することが示されていますね。
エシカルファッションが広まるきっかけ
ところで、エシカルファッションが世界で注目されるようになった背景には、悲惨な事故の発生があります。
「ラナプラザ崩壊事故」です。
2013年にバングラディシュで、8階建ての商業ビルが崩壊しました。
銀行・商店の他、27のブランドを扱う5つの縫製工場が入っており、このビルで働く労働者など1134人が死亡、330人が行方不明となりました。
ラナプラザは地元の有力政治家によって建設された後、違法な増築を繰り返してもともと5階建てだった建物を8階建てにしていました。
崩壊前日、ビルの壁に亀裂が発見され、労働者が不平を言ったそうですが、工場の管理者は取り合わずに強制的に操業を継続させ、、、
その結果事故が起きてしまいました。
日本の報道ではあまり大きく取り上げられませんでしたが
この事故はファッション業界で働く労働者がいかに劣悪な環境で働かされていたのかを世間に知らしめ、
同時に消費者が、その商品がどのような背景で生産されたものなのか考えることもなく、
「できるだけ安い」ものを求めてきた結果の惨事であるということを考えさせるきっかけになりました。
正直、私はこの事故について事故が起きた当時詳しく知りませんでしたが、
その後「ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償(2015)」という映画を観てどんなことが起きたのか知りました。
消費者の行動が遠くで働いている労働者に対してどのような影響があるのか全く無知で、衝撃的でした。
自分の好み・都合でしか服を選んでいたけれど、
巡り巡ってこの様な事故に加担していたのだと気づきました。
目を背けたくなるような事実で非常にショッキングですが、
服を購入する消費者の一人として、是非見てほしい映画です。
「ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償」映画情報
エシカルファッションとオーガニック
エシカルファッションは同時にオーガニック製品であることが多いです。
オーガニックは直訳すると「有機」「有機栽培」となり、
簡単に言うと「化学肥料や農薬を使わない」ということです。
洋服を作るうえで綿花の繊維を使いますが、オーガニックの洋服は
「(化学肥料・農薬を使わずに育てた)綿花」を使用していることになります。
化学的な肥料や農薬を使わないことによって、
・農地の土壌が化学物質によって汚染されない
・土壌の生態系を壊さない
・農地排水による水質汚染が起きない
・農家の方の健康被害が起きない
・工場の労働者の健康被害が起きない
など、様々なメリットがあります。
オーガニック自体「自然環境を守る」「労働環境を守る」ということに基づいていることから、
エシカルファッションを選ぶうえで切っても切れない関係になっているわけですね。
ただ、エシカルファッション≠全てオーガニック
です。
理由は、リサイクル素材である場合がある為で、
例えばパタゴニアでは古い羽布団や枕に詰められた羽毛からダウンを製作しており、これも
①「本来廃棄されるものを再利用する環境配慮」
②「新しく羽毛を調達しない動物愛護」
という点でエシカルだと言えます。
(しかしオーガニックではありませんよね。)
エシカルファッションとフェアトレード
フェアトレードもまた、エシカルファッションを選ぶうえでのキーポイントになります。
フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」です。
開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」のことをいいます。
チョコレートやコーヒーなどがよく見かけられますが、フェアトレードの衣料品ブランドもあります。
現代のファッション業界では、ファストファッションを筆頭に「なるべく安く」を追求し、消費者もまた安い商品を選んで購入しています。
そしてこの「できるだけ安く」の要求のしわ寄せが、立場の弱い原料の生産者や縫製工場などにいってしまいます。
途上国から先進国に衣類が輸出される際にも不平等な価格で取引されたり、工場がクライアントから到底無理な値段交渉を強いられたりすることによって、
縫製工場の労働者が朝から晩まで働いても暮らしができないような低賃金で雇われていたり
コットンの生産者に至っては生産コストすらまかなえないような厳しい状況になっています。
この様な地域では生活の苦しさから子供が学校に行くことが出来ずにいます。
また、PESTICIDE ACTION NETWORKによると、
コットンは世界全体の農耕面積のうち3%足らずしか占めていませんが、世界全体の殺虫剤のうち約16%、農薬全体では約10%が使われているという報告があり、環境に悪影響があるのと同時に、生産者の農薬による中毒死・健康被害を招いています。
この様な状況の中で、「フェアトレード」は途上国の生産者・労働者の基本的人権を守り、公正な取引をすること、環境破壊を防ぐことを目的とした運動です。
国際的に「国際フェアトレード基準」という基準が設けられていて、
「開発途上国の小規模生産者・労働者の持続可能な開発を促進すること」を目指して設計されています。
経済的基準
- フェアトレード最低価格の保証
- フェアトレード・プレミアムの支払い
- 長期的な取引の促進
- 必要に応じた前払いの保証など
社会的基準
- 安全な労働環境
- 民主的な運営
- 差別の禁止
- 児童労働・強制労働の禁止など
環境的基準
- 農薬・薬品の使用削減と適正使用
- 有機栽培の奨励
- 土壌・水源・生物多様性の保全
- 遺伝子組み換え品の禁止など
フェアトレード・ジャパンHPより
以上の特徴から、環境配慮や労働環境を改善するという部分で、エシカルファッションに共通しています。
エシカルファッションの価格は高い?
エシカルファッションって高そう・・と思われる方もいるかもしれません。
今までファストファッションに慣れ親しんでいると、やはり値段は高くなると思います。
しかし、そこで考え方を今一度見直してみるのはいかがでしょうか??
今までファストファッションを購入するときに支払っている値段が、そもそも無理のあった価格であったかもしれない、、と。
ひとつ例を出してみれば、フェアトレードブランドのPeople Treeでは
・ベーシックTシャツ→2600円+税
・長袖トップス→5900円+税
・パンツ→8500円+税
で購入できます。
「セール時期しか服は買わない!」
「ファストファッションの激安商品しか買わない!」という人は高い!と感じるかもしれませんが、
馴染みのあるファッションブランドの正規価格くらいではないでしょうか?
(もちろん、馴染みあるブランドといっても様々ですが・・・汗)
実際に値段を見てみると、そこまで敷居が高くなくなるかもしれません。
ただ、ラグジュアリーブランドの中にもエシカルブランドはあるので、ブランド全部が全部同じ価格帯というわけではなく、エシカルブランドにも価格の幅があると言えます。
エシカルファッションのメリット
エシカルファッションを選ぶことのメリットをまとめていきます。
途上国の生産者・労働者の暮らしが良くなる
エシカルファッションのメリット一つ目は、
「服の生産にかかわる途上国の労働者の方の暮らしが改善する」ということです。
ファストファッションの洋服を選ぶ代わりに、フェアトレードの洋服を選べば
コットンの生産者や縫製工場の労働者に労働に見合った賃金が支払われるようになり、
長時間働かされていた子供が学校に行って教育を受けられるようになるなどの良い変化が期待できます。
それから、本来コットンを生産する際に大量の農薬を使用していたところから、「化学肥料・農薬禁止」のオーガニックの生産にシフトすることによって、働く人の健康被害を防ぐことができます。
環境保全に繋がる
これまで紹介してきたように、エシカルファッションでは
「オーガニック製品やリサイクル素材を使った環境に配慮した生産」
「化学肥料・農薬を使用しない」
また「動物の権利の尊重」
という考えがあり、
原料を育てる畑の土が化学物質で劣化することを防ぐ
→農薬による水質汚染を防ぐ
という良い影響が期待できます。
オーガニックの基準を満たすためには生産地が数年無農薬の状態でなければいけないこともあり、
従来農薬を使用していた農地を、農薬を使用しない土壌に改良することにつながります。
エシカルファッションのデメリット
「エシカルファッションにデメリットは無いのか??」
・・
確かに、エシカルファッションにはまだ問題点もあります。
一つ目は、「エシカルファッション」の定義がはっきりしていないこと。
今までの記事を見ていただいて分かるように、現時点で第三者機関が調査してエシカルブランドとして認定したり、何か特定のマークが付いたりするものではありません。
そのため、「エシカル」という良い響きが独り歩きしてしまい、
宣伝のために利用されることが懸念されています。
解決策としては、消費者が情報を鵜呑みにせず、「真実を知ろう」と情報を取りに行こうという姿勢を持つことです。
「本当にこのブランドは労働者に対して公平な賃金を支払っているのか?」
「環境に対して配慮しているか?」
消費者の多くが注視する状況になれば、企業の姿勢も変わっていくでしょう。
「消費者は活動について知ろうとしている」ということが企業に伝われば、熱心に活動報告を行ってアピールすることが多くなるはずです。
また、新しくエシカルブランドに参入する企業も多くなるでしょう。
問題点の二つ目は、一部の商品で品質が落ちると捉えられている点です。
公正な取引のためにファストファッションより金額は高くなったけれど、品質がそれほど良くない、と思われてしまうと、やはり手に取ってはもらえません。
消費者も実際に身に着けるものであり寄付ではないので、「エシカルだからしょうがないか・・」ともならないですよね。
結果売れ残って廃棄となってしまえば、本末転倒なので
衣料ブランドとして高品質な製品を目指すことが当たり前に求められます。
一番理想的なのは、エシカルファッションブランドだとは知らずに洋服を選んでいたら、選んだものがエシカルファッションだった!とか、
エシカルファッションに大して興味がない消費者がデザインや素材などそのほかの要素にひかれて手に取っていた、という状態だと思います。
エシカルファッションを取り入れるポイント
エシカルファッションについてはよく分かって、これから取り入れたいけど、どうしたらいいのか?となっている人もいることと思いますが!
いくつかポイントがあるので、紹介します!!
フェアトレード認証
明確な定義が無いエシカルファッションにとって、「フェアトレード認証」は一つの明確なポイントになります。
フェアトレードマーク↓
フェアトレードジャパンHPより
このマークが付いていることによって、第三者組織から認証されているため
信頼性が高くなります。
古着を買う
「エシカルファッションブランド」からは少しずれますが、
「エシカルファッションで揃えるのは金銭的に厳しい・・」というような方は(私を含めて・・)古着を購入することも選択肢の一つだと思います。
ファストファッションは確かに、手軽に必要な洋服を調達することができますが、
同時に購入するために支払った金額はファストファッションブランドの利益になり、また「私はファストファッションを支持しているぞー」という意思表示になってしまいます。
古着はファストファッションにNOを示していくという点で有効であるとともに、
廃棄となるものを再利用するという点で環境負荷が少ないともいえます。
エシカルファッションブランドについて知る
エシカルファッションを取り入れるうえでの第一歩が
「エシカルファッションブランドを知る」だと思います。
もうすでに知られているブランドがエシカルファッションを始めたのであれば消費者のもとにもニュースなどで情報が届くこともありますが、
そもそも、公正な取引をする・環境保全をするブランドとしては通常の大きなファッションブランドに比べて広告を出さない傾向があると思います。
(あとは、一等地にお店を出していない、とか)
そのため、能動的にエシカルファッションを扱うブランドを学んでいく必要があります。
エシカルファッションブランドについてはこちら
「エシカルファッションの購入」はまさに「投票」
いかがでしたでしょうか。
気になるブランドは見つかりましたか?
「今まで知らなかったけれど実はエシカルブランドだった」というパターンもあるかもしれません。
普段、なかなかその服がどのような過程を経て店頭に売られているのか考えて服を選ぶ人は少ないと思いますが、
何気なく消費活動をする中で、劣悪な労働環境を強いている企業/環境汚染を引き起こしている企業のものを買ってしまっているかもしれません。
それは同時に、そのような企業にお金を払って「YES!そのビジネスを続けていってね!」と言って支持しているのと同じだと思います。
ここまで、エシカルファッションとブランドについて紹介してきましたが、
少しでもエシカルファッションに近づくことが出来たらいいなと思います。
ここまで読んでくださり、どうもありがとうございました!